私がレビューのためにこの腕時計をオメガから受け取ったとき、印象的な海のブルーと世界大陸の立体地図の次に気づいたのは、中央ヨーロッパ標準時を表示するために選ばれた都市だった。ビエンヌ(ドイツ語圏の人々にとってはビール)は、オメガ本社とその親会社であるスウォッチ・グループが位置する都市である。オメガ時計 メンズこの自治体はビール・ビエンヌとしても知られており、住民がフランス語系とドイツ語系に分かれていることでも有名だ。パリ、ジュネーブ、ベルリン、チューリッヒというもっと遥かに大きな都市を差し置いて、スイスの比較的小さな自治体であるビエンヌを文字盤に記すことを選択したのは、オメガのファンにとっては重要な意味を持つはずである。
略して「シーマスター アクアテラ GMT ワールドタイマー マスター」(実のところはGMTではなく、ワールドタイマーだ)として知られる本機は、オメガのラインナップの中ではやや異質な雰囲気を醸し出しつつ、クラシカルなコンプリケーションを美しく表現するのにスポーティな解釈がなされている。私にとっては、オメガは主として実用時計だった。すなわち、伝説的なスピードメーター クロノグラフとシーマスター ダイバーのことである。一方でワールドタイマーは、通常はラグジュアリー・ブランドがもつべきラインナップとされる傾向がある。そのラグジュアリー・ブランドというカテゴリーは、オメガが技術的進歩を遂げる一方で、ますます存在感を発揮する場になってきている。セドナゴールドとステンレススティールケースの両方のバージョンで入手可能なこの非限定モデルは、オメガが2年前に87本だけ発売したプラチナの限定版ワールドタイマーに続いて登場したものだ。
本機を作動させるCal.8938を見てみよう。高度な技術で美しく仕上げられた内部機構は、オメガが腕時計メーカーとして、この10~15年間でいかに高度に進化したかを物語っている。そのムーブメントにおけるジョージ・ダニエルズのコーアクシャル・エスケープメントのほぼ完璧な実現から、スイスで最も厳密ないくつかの認定基準の開発、採用に至るまで、オメガは自らを、大量の製品を高度に品質管理するという点で、腕時計メーカーピラミッドの最上位にいるロレックスと肩を並べる存在にまで高めたといえる。現代的なオメガのどのムーブメントにおいても、非常に高い価値が付与されており、それはローター、プレート、ブリッジを装飾するアラベスク模様の良質なジュネーブ・ウェーブを遥かに凌ぐ出来栄えだ。
オメガが現在生産している多くのキャリバーと同様、Cal.8938はマスター クロノメーターである。そのことは、スイスの独立機関であるMETASによりクロノメーターの認証を受けているうえに、耐磁性に非常に優れていることを意味している。その耐磁性能は、最大1万5000ガウスに達する。この特徴ひとつとっても、この腕時計がとりわけ、無数の電子機器に囲まれた現代のライフスタイルによく適していることを示している。(さらにいえば、飛行機のコックピットにも適している。ここは、この製品のような複数の時間帯を示す腕時計が求められる合理的な空間でもある)